「『カスタマイズ』ってどういう意味?」
母から唐突に質問された。
よく耳にする言葉だし私自身も使ったことがある。
しかしいざ説明しようとしてもうまい表現が思いつかない。
すかさず手元のスマホでググる。
辞典・百科事典の検索サービス – Weblio辞書さんによると
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「customize」は、個々のニーズや好みに合わせて、
製品やサービスを変更・調整することを意味する英単語である。
一般的には、既存のものを特定の人や目的に合わせて
改良・改造することを指す。
例えば、自動車のカスタマイズや
ウェブサイトのデザイン変更などが該当する。
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%BA
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ということらしい。
私の中では何となくしっくりいかないのだが
他のネット辞書的なサイトでも似たような表現になっているので
説明文としてはこれが一般的なのだろう。
読み上げて母に聞かせたところ
納得してくれたらしくそれ以上の追求はなかった。
これ以上の説明を求められても
今の私には手立てがないので胸をなでおろしたというのが正直なところだ。
このほかにも母からはちょいちょい無防備な時に質問される。
「#(ハッシュタグ)」や
「ロープレ(ロールプレイングゲーム)」
「バズる」など
おそらく40代以下の世代なら
明確な言語化はできずとも
直感的にニュアンスの掴める言葉ではないかとおもう。
ただ、それをITリテラシーのほぼない
後期高齢者や小学生に質問されたとき
理解できるように説明するとなったら
あなたはどう言語化するだろうか。
先日ある方から
「『相関関係』と『因果関係』を小学生にも理解できるように説明せよ」
というお題をもらった。
頭の中にイメージ図を思い浮かべられるが
双方の違いを明確に説明せよと言われても
うまく言語化されていないことに愕然とする。
しかも「小学生にも理解できるように説明する」
となるとずいぶん難易度が高く感じられる。
普段如何に自分が分かったつもりで過ごしているのかを痛感した出来事だ。
因みにこのお題に対しての私の回答は
「相関関係」とは相手がいるからこそ成り立つ関係性のことをいう。
「親」というからには「子」がいることになるし
「子」であるならば「親」がいるはずだ。
相手の存在によって
自分と相手との間にある関係性についての名詞が生まれる。
それが「相関関係」。
「兄」であるならば「弟」か「妹」がいることになるし
「妹」というからには「兄」または「姉」の存在が必要だ。
単体としての存在だけでは成り立たない
関係性を表す名詞を持ち合わせる
双方のことを「相関関係」という。
では「因果関係」はどうかというと
ある現象の原因とその結果の結びつきをいう。
「こたつで眠ってしまった」から「風邪をひいた」や
「種をまいた」から「芽が出た」というような
ある要素が「原因」となって導き出された
「結果」との結びつきの関係性を指す。
どうだろうか。
ネット検索や辞書での説明とは異なるだろうし
私の理解が至らない部分もあるだろう。
人それぞれ説明し易い言葉や状況があるだろうから
あなたもご自身なりの説明を書き出してみると
面白いかもしれない。
できるならば小学生にも理解できるように。
今はChatGPTやGeminiなど
便利なツールがあるので
自分の頭で考えるより早く
適格な回答を得られる時代になったが
こういった脳ミソのエクササイズは
ある程度必要なのではないかと私は考えている。
人間は考える葦である。
考えることを放棄したら人間ではなくなってしまうのだ。
勿論、
「他にもっと重要なことに時間を割きたいから
こんなくだらないことに構ってなどいられない」
という方もいるかもしれない。それは確かにそうだろう。
だがこの記事をここまで読んでいるあなたは
おそらくそれほど時間に追われてはいないんじゃないかと私は想像する。
なので是非試してみてはいかがだろう。
無理強いはしないが。
おそらく私以上に上手に説明してくれるに違いない。
そしてできればそれを元手に
私にフィードバックをくれると
私の理解も深まるのでありがたく思う。
もしあなたが私が思うよりももっと暇人であったならばの話だが。
今出てきた「フィードバック」という言葉についても
様々な解釈があるように思う。
ネット検索で出てくる「フィードバック」の説明にはこのようなものがある。
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フィードバック(英語:feedback)とは、
日本語では「反応」「意見」などと言い換えられるのが一般的です。
小学館のデジタル大辞泉では、
「顧客や視聴者など製品・サービスの利用者からの反応・意見・評価。
また、そうした情報を関係者に伝えること」と定義されています。
https://www.motivation-cloud.com/hr2048/c396
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フィードバックとは、
問題解決や目標達成に向けて軌道修正を促すための、
教育や評価を表す用語です。
もともとはITや制御工学の分野で用いられている言葉で、
出力の実際の値を目標の値と比較分析し、
入力に戻すことで、入力の値を調整することを意味します。
ビジネスにおけるフィードバックの場合、
口頭で直接的に伝えられることもあれば、
文章などを通して伝えられることもあります。
また、企業においては多くの場合が上司から部下に対して行われますが、
反対に部下から上司へ行うことも十分可能です。
https://survey.lafool.jp/mindfulness/column/0220.html
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端的にまとめると
「フィードバック」とは
「ある出来事や物事に対する評価や意見を伝えること」
となる。
私としてはとても曖昧な表現で
明確な定義を避けているように感じられるが
あなたはどう受け止められただろう。
ビジネスにおいて
「フィードバック」に対してよく比較される言葉に
「アドバイス」がある。
辞典・百科事典の検索サービス – Weblio辞書さんで
「アドバイス」を検索すると以下のような説明になっている。
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「advice」とは、
助言・忠告・見解・報告といった
自分の意見を相手に伝えることに関連する意味を持つ英単語。
「advice」は名詞形であり、
「アドバイスをする」と表現する際は動詞形の「advise」を用いる。
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B9
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ここでもまた「意見」という言葉が使われる。
私的な見解でこれを端的にまとめると
「アドバイス」とは
「自分の意見を相手に伝えること」となる。
要するに
「アドバイス」も「フィードバック」も
「自分の意見を相手に伝える」ということだ。
「アドバイス」と「フィードバック」の用語の違いについて
説明されている記事は
ネット上で幾つか目にしたことがあるが
どれも曖昧な表現で
「それで、明確な違いはナニ?」と
首をかしげてしまうモノが多かった。
勿論、ネット上に(或いは紙媒体で)公開されている記事を
全て読み込んだわけではないので
明確な違いを提示している記事もあるかもしれないが
私の脆弱なリサーチ能力では探しきれなかった。
しかし私は
「アドバイス」と「フィードバック」を
明確な違いのある言葉として区別している。
私の解釈では
「アドバイス」とは「相手の未来の言動に対するコントロール」を意味する。
相談者である相手が
今後どう行動するのかという方向性や手段を
相談を受ける側である自分が
どう行動するのが良いかを明示して
その通りに動かそうとすること=コントロールすること
それを私は「アドバイス」と呼ぶ。
具体的な言葉としては
「〇〇した方が良いんじゃない?」
「こういう方法もあるよね」
「こっちにしたら」
「こうしなよ」
など。
自分が相手の行動を提案し、
自分の思考や思想の範疇に納めて支配しようとしている。
というふうに私には見える。
アドバイスする側は
無意識的に相手の言動をコントロールしようとしているので
自分が「アドバイス」したように相手が動かないと
腹を立てる。
或いは自分のアドバイス通りに動かない相手を
罵ったりするかもしれない。
「だからあいつはうまくいかないんだ」
とか。
本来、相手が未来に対してどう行動するのかは相手の自由だ。
例え「アドバイス」した相手が
その「アドバイス」通りに動かなかったとしても
怒るのは筋違いだ。
相談した側も
そんな「アドバイス」をしてくる相手には
二度と相談したいとは思わないのではないだろうか。
それに対して私が定義する「フィードバック」とは
「過去から現在に至るまでの事実確認の整理と現状の把握」だ。
現在の状況はどうなっているのか。
どのような選択をして現在に至ったのか。
時系列はどうなっているのか。
そういった事実関係の確認をするにすぎない。
もし自分の意見を伝えるとしたら
「I(アイ)メッセージ」であることが必須だ。
「私はこう感じた」
「私はこう思っている」
「私だったらこう考える」
いう具合に。
この時自分が感じているということの
「事実」を述べるだけにとどめておく必要がある。
相手に提案はしない。
そして「相手」が今後どうしたいと考えているのか
を確認する。
ここで注目しなければならないのは
これはあくまでも「相手」の考えであることだ。
相談を受ける側の考えや希望は
一言も入れない。
相手の未来について
一切言及しないところが
「アドバイス」との明確な違いだ。
「過去から現在に至るまでの事実の整理と現状の把握」だったら
「今後どうしていきたいか」は「未来」に該当するから
定義に矛盾があるのでは?
と思われる方もいるかもしれない。
だが、
「相手」が
「現時点」で
「今後どうしたい」と考えているのか、
ということを言語化して整理しているだけであって
「未来」の話は何もしていない。
ましてやコントロールもしていない。
具体的なフィードバックの言葉としては
「つまり、〇〇ということですか?」
「本当に?」
「別の可能性はありますか?」
「他に方法があるとしたら?」
などが挙げられる。
相手の未来に対する挙動は相手に主導権があるのだ。
少し前にあるミーティングに参加した時のこと。
参加者がこんな言葉を口にしていた。
「まぁ、これは凄くアドバイス寄りのフィードバックなんですがね」
これまでこの記事を読んでくれたあなたなら
私がこの言葉を聞いた時に感じた
何とも言えない気持ち悪さを
理解していただけるだろうか。
この方の言葉から推測されることは
「フィードバック」の中に「アドバイス」が含まれているということ。
またはその逆。
要は大きな円と小さな円があって
小さな円は大きな円の中にすっぽり入り込んでいる
というようなイメージだ。
もしくは二つの円が
少し重なり合っている状態なのかもしれない。
或いは
「アドバイス」と「フィードバック」は
一直線上の両端にあって
「アドバイス」から「フィードバック」へグラデーションしていくようなもの
と捉えているのかもしれない。
この方の中で
「アドバイス」と「フィードバック」の定義は
どのように言語化されているのだろう?
とても興味のそそられる部分だ。
まぁ、おそらくもう会うことのない相手なのだが。
そんなこんな考えていたら
母から昼食の支度が出来たと声がかかった。
食卓に並べられていたのは餡掛け焼きそば。
満面の笑みを浮かべながら得意げな顔で母が言う。
「今日のお昼のメニューは餡掛け焼きそば!
レシピでは白菜だったけど
キャベツにして我が家風にカスタマイズしてみました!」
…うん。それは「アレンジ」だね…。
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